1988年の創刊当時、日本はまだバブル景気に酔いしれていました。
ジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれ、日本製品が世界市場を席捲、「24時間戦えますか」というコマーシャルが流れるほどモーレツ社員ばかりの時代でもありました。一方で、日本人ならではの謙虚さや、人情味あふれる地域のコミュニティが失われていく始まりの時期だったような気がします。
本当にこのままでいいのか。「もう一度、人の心を見つめた経済・政治・社会を考える必要がある」のではないか、という想いが創刊の背景にありました。
しかし、あれから日本の主力製品は次々に敗れ、さらに少子高齢化、格差拡大をはじめ閉塞感が強く漂っています。なんとなくあきらめムードが広がり、社会全体で歯を食いしばってでも頑張って、豊かな経済を作り上げていく向上心が足りなくなっている気がします。小誌はこうした状況でも逃げない、明るい未来の経済を築こうとする次世代を担う人のための総合経済誌を目指しています。
ロシアのウクライナ侵攻、中国の台頭で、今や世界は専制主義陣営と民主主義陣営、インドのように非同盟を掲げる陣営に分かれてしまいました。エネルギー資源も持たず、政策のまずさから食料自給率も先進国最低の日本。
それでも、プレゼンスが高かったのはモノづくりを基盤にした経済力でした。しかし、多くの産業は敗戦の連続。経済というソフトパワーを立て直さなければ、日本の地位はどんどん落ちてしまいます。男女平等の働き方改革も含め、新たな産業、骨太の伝統産業をいかに育て、世界に優良なサプライチェーンを作っていくか、大きな絵が必要です。
そして、それが、米国の属国のような立場から解き放たれ、独自の防衛体制も築けるでしょう。
小誌はそれぞれの分野で有力な執筆陣の支援を仰ぎ、いま起こっていることを丁寧にお伝えし、読者の皆さんの想像力を豊かにする一助になりたいと考えています。
一年でも通読していただければ、いまの世の中の動きを理解して頂けるような編集方針を取っております。
ただ、堅い雑誌であることは間違いありません。ある程度の知識と経験を持った方でなければ、とっつきにくい雑誌であることも否定いたしません。
ただ、読み続けていただければ、そのうちに皆さんの考える引き出しを増やすことができる雑誌であると自負しています。